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Channel: 有職故実 YUSOKU KOJITSU
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机上

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装束店の仕事は、物作りが基本なのですが、

会社として経営を推し進めるためには、デスクワークも大事な

仕事の1つです。



普段は様々な職人たちと、製作の現場で打ち合わせをして

会社に戻り、1人でデスクに向って書類作りをしています。


最近は様々な業種の方たちと一緒に、様々なプロジェクトに関わる機会

が増えてきました。


先日もあるプロジェクトを実現可能にする為に、申請書を製作する運びと

なりました。


申請書を作る作業にあたったのは京都では、私を含め4人、東京で2人

東京の2名は、Skypとメールでのやり取りを行い、話を詰めて行きました。


申請には期日があり、本格的に動き出せたのが、期日の1日前。

おしりに火が付いた状態です。


それぞれに本業を熟しながら、翌日の午前10時までに書類を郵送しない

といけません。



特に役割分担などは決めずに始めましたが、各々が出来る事を行っていました。

集まれる時間は1つのテーブルで共同作業し、席を外れた時はメールでやり取り

を行うようにして、1つ1つ課題をクリアしていきました。



当初のロードマップでは、夕方までに書き上げて、時間指定付きの宅急便で

東京のとある場所へ送付する予定でしたが、間に合いませんでした。

作業は夜まで続ける事になりました。



今夜中に仕上げて、ブラッシュアップをし、その書類を東京にメールに貼り付け

て送り、朝一でプリントアウトしてバイク便で届けるスケジュールに変更です。


1つの作業が滞ると、時間に間に合わないというまさに、綱渡り状態です。

約束の時間に書類が着かなければ、この1日は全て無駄となってしまいます。


馴れない作業に加え、空いた時間を見つけながら課題をこなしていますので、

ストレスもどんどん蓄積され、途中暗礁に乗り上げる時間帯もありました。



有職故実   YUSOKU KOJITSU


結局、作業は深夜まで及びました。

予定通り、朝一でプリントアウトをしてバイク便に手渡す事が出来ました。



振り返ってみると大変な1日でしたが、すごい高揚感を感じました。


『無事バイク便に渡せました』 と朝にメールを見たとき、

達成感と解放感、そして安堵した気持ち、様々な感情が入り混じった状態。



運動会のバトンリレー競争で、最後のアンカーがゴールに向かうのを

皆で見守っているときの気持ちを思い出したかのような。

そんな気分になりました。


いつも1人でデスクワークをしていたので、チームで作業することに触れ

適材適所で1つのゴールに向かう事に飢えていたのかもしれません。



とてつもなく疲れましたが、いい気分の朝でした。



ゴールのためにチームがあり、チームがあるからゴール出来た。



仲間で1つのことに向かうのは、気持ちのいいものです。







PR: あなたを満たす、VOLVOのクオリティ。

常若

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今年は 『遷宮』 という言葉を皆さんも、よく耳にされることが多いと思います。


それもそのはず、5月には島根の出雲大社、今月は伊勢の神宮と日本を代表する

神社が遷宮を迎えた年でもあります。


ニュース等でも広く伝えられ、テレビ画面でその様子をご覧になられた方も多いの

ではないでしょうか。


この遷宮行事は、何も神宮や大きい神社だけで行われるものではないのです。

どこの神社であっても行われる大切な神事です。


鎮座される本殿を定期的に見直し、修繕や造替を行い、常に元ある形を保ち続ける

ために行われます。



神道では 『常若 とこわか』 という言葉があります。


変わらない姿であり続けようとする思いは根源的なものだという事。



日本には四季があり、雪解けが始まる春には田畑を耕し、種を撒きます。

夏に作物は日差しを浴びて生育し、秋になるとそれを収穫し貯えます。

そして厳しい冬を乗り越え、また春を迎え、次なる種を植えます。


当たり前のことですが、これを連綿と続けてきて今(現在)があるのです。


日常と言ってしまえば、簡単ですが、『平凡は非凡なり』という諺があるように

当たり前の事を続けていくことは、実は非常に困難も伴うということかもしれません。


最近は自然災害の規模も過去に比べると大きいものになっているように思えますし、

社会も多様化し、複雑になってきています。


元ある形を保つこと (常若) が如何に穏やかな状態であるかを示すうえで

遷宮は、この現代において大変意義深い行事だということを学びます。




伊勢の遷宮が間近だと話題に挙がる中、私は奈良県にある神社の遷宮の仕事に

取り組んでおりました。


隣には大仏で有名な東大寺、奈良県庁社もあり奈良市の中心地に位置し

小さいお宮ですが、創建1217年と歴史ある神社の遷宮の造替に携わりました。



有職故実   YUSOKU KOJITSU
奈良 氷室神社   撮影 近藤泰岳 氏



本殿の桧皮葺の屋根張替、本殿内神の調度品の新調が施されました。



有職故実   YUSOKU KOJITSU
奈良 氷室神社   撮影 近藤泰岳 氏



この神社は代々弊社御用達として、出入りさせて頂いております。

前回の遷宮は、先代(父)が携わり、その前は先々代(祖父)と経ております。


本来、本殿内は御祭神が鎮座されているので、扉を閉じてあります。

この遷宮という特別な時期だけ開帳するのです。


1年前に、仮遷宮(げせんぐう)という、御祭神を仮殿にお移して、その間に

内装調度品を搬出して、徹底的に復元する作業を行います。



有職故実   YUSOKU KOJITSU
奈良 氷室神社   撮影 近藤泰岳 氏



つまり、元ある形を維持する 『常若』 を行います。


40年前、20年前には当たり前に出来た仕事が、現在では出来なくなりつつ

ある状況での造替は大変苦労を強いられました。

後継者不足は懸念として常に頭にはあったのですが、今回の仕事で痛感させ

られました。また納められている調度品は、造られた時代背景や地域性も併せ

もつ物で、画一化したものはありません。ある程度の資料はありますが、扉を開け

て、私が初めて扱う調度品も沢山ありました。



有職故実   YUSOKU KOJITSU
奈良 氷室神社  撮影 近藤泰岳 氏



途中、幾度となく壁にぶつかり、見直しを迫られました。

それでも何とか期日に間に合い、無事納品出来る運びとなりました。


恐らく、先代たちも同じような経験をしたと思います。

父も同じような事で悩んでいたのかなぁと思いを馳せることもあり、

普段はあまりないのですが、亡き父の面影を思い出す時間も持てました。



遷宮とは、何も物だけではなく、人の心も改めるものだと気付かされました。


形や心を次の世代に新しくして伝えることを世界に類を見ない形で引き継ぐ

事に、非常に感慨深いものがる。


と伊勢神宮の鷹司大宮司もお言葉を挙げられています。



今回の遷宮は終わりました。私自身は非常に長く感じましたが、

連綿と続く時間軸の中では、ほんの一コマでしかなく、春で言えば

種を撒いた事と同じ、また夏、秋、冬と続き、そして春を迎える連続

のなかでの事。



日本人が大切にしていきたい心の表れを形にして残していく

仕事に身を置くことが出来て有り難い気持ちになりました。
















ご案内 AS2

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今週末の11月2日(土)に、AS2 #16 Autumn が開催されます。


世界でも評価の高いインスタレーション作家の木村奈央さんを

お招きして、HubKyotoで展示致します。


当日は、そのインスタレーション作品からインスピレーションを

受けたライブパフォーマンスも行います。


平多好美さんは、木村さんの作品に感銘を受け、是非作品の

前でパフォーマンスをしたいとの事で、横浜から来て頂きます。



今回のサブタイトルでもある、浸潤するという言葉


思いや雰囲気などが広まる様という意味がるそうです。


AS2には、アート、人、食など様々な要素を用いて展開しております。

その全てのファクターが、来て頂いた皆様に浸潤するように努めて

参りたいと、只今準備に勤しんでいます。



有職故実   YUSOKU KOJITSU



また、皆さまのお顔を拝見出来れば幸いです。

ご都合宜しければ、是非お越し下さい。





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#16 AS2 Autumn Nao Kimura Exhibition
木村奈央展 -Innocence-

日時:2013年11月2日(土)14:00~20:0
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・15:00~、18:00~、20:00に平多好美パ
フォーマンス
・17:00~トークショー

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タイムテーブル:

・14:00~乾杯
・15:00~平多好美 パフォーマンス(約10分)
・17:00~トークショー(インタビュー原麻由美)
・18:00~平多好美 パフォーマンス(約10分)
・20:00 平多好美 パフォーマンス(約10分)エンディング

※採れたて作物を用いた手作りのパーティフードとドリン
クをご用意致しております

アーティスト:木村奈央 氏

パフォーマンス:平多好美 氏

場所:Hub Kyoto
(京都市営地下鉄烏丸線鞍馬口駅1番出口より徒歩すぐ)

入場:無料

ただし、お勧めの一品をお持ち寄り頂くか、
アーティストポストカードセット(¥500)を販売致し
ております。
その売り上げはAS2のアーティスト支援活動基金として
活用致します。また東日本大震災の義援金として塩釜青年
会議所へ寄付させて頂きます。

なお、お子様連れも大歓迎ですので、
どうぞお気兼ねなくお越し下さい。
お会いできるのを楽しみにしております。

(公式ブログでの告知文はこちらからご確認頂けます。)
http://ameblo.jp/as2blg/
entry-11638041932.html

装束再考察 Vol.3

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皆さんのお着物の中に、家紋の入ったものがお有りだと
思いますが、それぞれにその家の紋(マーク)あり、それを衣服に
充てがう文化があるのは、日本らしい風習だと思います。


その紋のデザインは丸の形をしているもが多いと思います。


装束で狩衣などに使用する文様にも丸の紋を多く使います。


有職装束に使う丸紋も多種多様にあるのですが、代表的で
比較的多く使用される丸紋を幾つか下に挙げます。



有職故実   YUSOKU KOJITSU

  臥蝶の丸 じんちょうのまる


有職故実   YUSOKU KOJITSU

  雲鶴の丸 うんかくのまる


有職故実   YUSOKU KOJITSU

  花鳥の丸 かちょうのまる




植物や動物など自然界のものを丸の中に描く意匠が特徴です。
丸紋以外にも、形としては色々とあるのですが、丸を基本形として
のデザインが多く取り入れられています。


ではなぜ、丸紋が多いのか?という疑問が湧いてきます。


有職故実   YUSOKU KOJITSU

連珠円紋(れんじゅえんもん)と呼ばれる意匠の写真です。


6世紀ごろに生み出された柄だと云われています。
発祥地はソグド、今のウズベキスタンの辺りという事です。


ウズベキスタンやタジキスタンなどの所謂中央アジア圏は
古来から西と東を結ぶ、重要な貿易の要の都市として発展して
きた場所だそうです。

丸の中に、鳥獣、狩猟、樹下動物、花紋を入れ込み形成された
一連のデザインは、装束で扱う有職文様に起因している
ように思います。


また、丸の中にいる動物などは、番(つがい)で左右対称のものが
多く、上で挙げた雲鶴紋などと作りが似ています。


ある意味、敢えて丸の中だけで表現するという制限を持たせて
いるかのようで、非常にコンパクトに模様を表現するように出来て
いるように思えます。


また、鶴と雲や、鳥と花など何かと組み合わせるパターンも
多く見受けられます。その組み合わせで1つの情景を思い浮かばせます。


有職故実   YUSOKU KOJITSU

四騎獅子狩紋錦 (しきししかりもんきん)

思わず舌を噛みそうな名前ですが、これは日本最古の木造建築
として知られる法隆寺に残されている国宝の錦の生地の写真です。



樹下動物 樹木を中心として、馬に跨った貴人が獅子狩りをしている
風景が連珠円紋の中に描かれています。

中央に配した樹木がその背景を表現するのに効果的に使われて
います。こうした図案は、樹下動物と言われ、有職文様でも
見受けられます。



$有職故実   YUSOKU KOJITSU









有職故実   YUSOKU KOJITSU


これは、正倉院に保管されている屏風の1つで
鹿草木來纈屏風(しかくさききょうけちのびょうぶ)と読みます。
もう完全に舌は噛んでしまいます。


古代ペルシャでは、天空には恵みの雨を降らせる深海があり
その海中には、ハマオという聖樹があり、不死の霊薬が作られる
という伝承があるとされ、その木の下は聖地や楽園を意味し、
その場所にいる動物たちは清められ祝福されることを表している
と記されています。


水場があり樹木が生い茂る所には動物たちも集うという
理想郷を描いています。

中央アジア圏は砂漠地帯ですので、長い交易の旅路は困難を
極めたのではないでしょうか、その途中にあるオアシスが
商人たちにとって理想郷であったのかもしれません。



最後に、日本に今もある樹下動物の文様を紹介します。


$有職故実   YUSOKU KOJITSU

桐竹鳳凰麒麟 きりたけほうおうきりん

装束の文様として使用されるのは天皇のみとされています。

平穏な時代を治めた君主を褒めるために、天上より舞い降りる
鳳凰は桐の木に巣くい、60年に1度実る竹の実を食べ、現世に
巣くうとされる。しかし国が荒れると、たちまち天上に飛び去って
しまう。

このような平穏の状態を表す柄としての意味合いから
天皇の装束のみに用いるようにと定めてあります。



このように1つの意匠から読み取れる意味合いは実に興味深く
人種や国を問わず、美しいものが集う世界は平穏だということ
を説いているように感じますし、
人間の理想郷に対する飽くなき追求も感じ取れます。


毎度ながらの長文のお付き合い、有難うございます。










点・線・面

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私たちが毎日のように手にする織物や生地は、例えて言えば面。
その一枚の面を色々繋ぎ合わせて1着の衣類にします。

その面である織物は、経糸と緯糸の交差で構成されています。
つまり1本の線。何千本、何万本の線の交差で1つの面を作り出しています。

1本の線である糸は、1匹の蚕が生み出す繊維。
遡っていくと1匹の蚕に辿り着きます。言い換えれば点です。

点から点を1本の線として結び、その線を幾重にも交差をすることで
様々な面を生み出していきます。



人の出会いも同じようなもので、ある1つの出会いから始まり
様々な人の出会いを介して、ある局面を迎えるように思えます。



今、あるプロジェクトが進行中です。

今年の夏、ある方を介してお会いした方々と、今までにない
装束で使用する有職文様を生み出そうというプロジェクトです。

東京デザインプレックス研究所の沼田努さんと、
そこでデザインの勉強をしながら、様々な企業の
企画のデザインなどを手掛ける、villageというユニットの
芦田さん、田中さん、高山さん、熊川さんの4人。

$有職故実   YUSOKU KOJITSU

20歳中盤から30歳前半の若い4人からなるチームと
アドバイザーとして、沼田努さんにも参加してもらい
進めているプロジェクトです。


4人の方々は、今まで有職文様についての基礎知識はなく
神官装束がどのような物かも知らない人たちでした。


プロジェクト当初、彼らには、実際に装束を見てもらったり、
有職紋様の基礎的な知識を把握してもらいました。
先月には京都に来てもらって、実際に織物が
作られる工房なども見学してもらいました。


勿論、それだけで有識装束の全てが解釈出来るとは私も思って
はいません。


ですが、実はその部分がこの企画の大事な部分でもあります。


有識文様は、このブログでも書いたように長い時間をかけて
熟成された文様の蓄積が今も受け継がれています。

今では、歴史ある伝統を受け継いだ文様も、生み出された時代には
非常に前衛的なものであったかも知れませんし、最初は受け入れ
にくい柄であったかも知れません。


私は平成、または次の時代に繋がる文様を考えるうえで、
全く違う分野で活躍されている方の考えが反映される事で、
ある種の化学反応のような結果を生み出すのではないかと
考えています。


点と点が繋がり、線と線が交差を繰り返し、今までに見た
ことないような、新しい面が生み出される事を期待して


$有職故実   YUSOKU KOJITSU



彼らと共に、文様のブラッシュアップを進めて参ります。

皆さんもこのプロジェクトに期待して頂き、見守って頂ければ
幸いに思います。


最後に、この素晴らしい出会いを叶えて頂いた
山本ミッシェールさんにお礼申し上げます。




















Genetalk #003 告知

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以前から親交のある、GENETO建築設計事務所でトークイベント

のご依頼を賜りました。


彼らとは、業種の垣根を越えて、共同で様々な企画を進めてきました。


神官装束、神殿調度品を扱う装束司と、建築設計士

日々している仕事は違いますが、


『場』をつくる事に関しては、共通しているとも言えます。



装束や、調度品を用いて、厳かな雰囲気を作り出す。


建物を建てる事により、その地域の街並みを作り出す。


自分の専門知識などを活かして、『場』を提供する。




この場を辞書で引くと、人が集まる所と訳されています。

彼らと一緒に、場を設えることで、垣根の超えた交流の場所を

生み出すことが出来ると考えます。




本来、装束店が神社のことなどを皆さまにお話しするのは

大変僭越であり、出過ぎた事だとは重々理解をしております。



私は宗教家でもありませんし、神職の身でもありません。

あくまでも、神道の分野の方々の下支えを生業としてきた

なかで、学んできたこと、経験したことをお話し出来れば

との思いです。



以前にもこのブログで書いたのですが、長い間培ってきた

文化や風習が、間違った解釈で伝わる事に憂いでいます。


神道は日本独自のものですし、日本人が伝えていかないと

なくなってしまいます。



そんな思いに、GENETOは応えてくれました。



1月24日の金曜日、夜7時から始めます。

ご興味頂ける方は、是非お越し頂ければ幸いに存じます。




詳細は、こちら から。







お誂え

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誂える あつらえる

お誂えをされた経験は皆さんありますか?

現代風に言うと、オーダーメイドです。

スーツを誂えた経験はある方もおられると思いますが、
足袋を誂えされた方は少ないかもしれません。

京都は茶道、華道のお家元も多く、また能、狂言、歌舞伎役者
花街の舞妓さんなど和装をお召しになるプロの方々が
多くおられます。

和装の足下は足袋が必須です。毎日足袋を履かれる方にとって
足袋は自分に合った物が必要になります。

そこで、所謂プロの和装の方は自分の足の寸法を採寸して足袋を
誂えるのです。

ですが、そんなプロの和装の方でさえ最近では誂える方が希有と
なっているのが現状で、それに比例し足袋を縫製する職人も非常
に貴重な存在となっています。

数十年前には、京都はもちろん、東京にも数多くの誂え専門の
足袋屋さんがありました。

今では、足をミリ単位まで採寸して、お誂えの足袋を縫製する
職人は日本で、いや世界で1人となってしまいました。




呉服屋さんやデパートで販売されている足袋は既製品です。
つまりそのお店の型をもとに作られた規格品です。

足の形は幅広、甲高など千差万別、自分と同じ足の形の人は
ほとんどいません。どこかが余ってシワが出たり、窮屈な部分
が出て足が痛くなったりするのは当然と言えば当然です。

また既製品は、生地を効率良く使用する事が優先されますので、
足の大きさに対して、生地を極力少なく仕立ててありしっかり
足を包むことが出来ません。

足の袋と書いて足袋と読むのに、しっかり包み込むことが
出来なければ本末転倒です。




また、足袋にも正しい履き方があります。
縫い目に合わせた足の入れ方があるそうで
この履き方で足袋に足を入れるとコハゼ(留金具)も簡単
に止められ、足も痛くなりにくいとのこと。


着物の着付け方は習っても、足袋の履き方までは教わった
経験がなく、私も目から鱗が落ちました。




この職人のもとには、日本中または世界中からの注文の依頼
が多く寄せられ、今から頼んでも出来上がるのは半年後だそう
です。それもそのはずです、この方以外にお願いする所もなく
この方1人で総ての行程を熟していかれるのですから。
半年でも早い方かもしれません。


本当に良いものは手間暇がかかるのです。


私が個人的に気に入っているのは、履き心地、見栄え
は当たり前なのですが、コハゼ(留金具)に名前を
刻印して頂けることです。

お誂えの印。 粋というものです。


ご興味おありでしたら、弊社までご一報下さい。
この職人のもとへお連れ致します。













One hundred

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100年先のことを考えたりされますでしょうか。

今が2014年ですから2114年です。

私は今年で41歳なので、100年後は141歳となります。
生きていれば、テレビに出れるくらいのご長寿です。

いや、普段の不摂生を顧みると恐らく無理です。
いやまた、再生医療などが進歩して、今より若々しく
過ごしているかも。。。。


と、想像するとキリがありません。



昔の人も100年先、何百年先の未来を想像していた
と思いますし、何かを生み出そうとした時には
未来に向けて受け継がれていくように思いを込めたと
思います。


100年先の未来に標準を定め
4人の若きデザイナーと私とで
新たな文様を生み出そうというプロジェクトが
進行中です。


東京デザインプレックス研究所の協力のもと
Villegeというデザインユニットの4人のチームに
有職文様のデザインを依頼をして、私が培った経験を基に
実際に装束の文様として理に適っているかを精査する
という作業を繰り返してきました。





文様のデザインを考えるにあたり
最初に行ったのは柄のモチーフの選別とコンセプトです。

有職文様は自然界に存在するものを使う大前提があり
過去の文様は植物、動物、また雲や波などの自然現象などを
巧みに用いて作り出されています。

つまり周りにある身近な動植物を用いたり
四季を通じて変わる自然など、目に見える
ものを柄に落とし込んでいる訳です。



今回、この平成の時代に文様を考える上で
文明の進んだこの時代だからこそ見る事が出来る
ようになった自然界の物に着眼しています。


例えば、肉眼では観察することが出来なかった
物が顕微鏡という文明の力で拡大して見れるように
なった細微なもの。

決して素潜りでは辿り着けなかった深海の世界

空を飛べるようになり、地上からでは見れなかった世界

流通の発達で、日本では自生していなかった植物が身近
になり愛でることができるようになった花



これまでに彼らが私に提案してくれた文様は40種類を
超えています。その1つ1つを精査してようやく3種類に
絞り込みました。





100年後、恐らく私も彼らも生きてはいないでしょう。
でも、その100年後の為に真剣に取組んでいます。

今までに作られた文様も何年もの時間を掛け
伝統文様としての今があります。


目先の評価を求めるのではなく、次の世代に評価される
ことを想像し文様(デザイン)を考え抜くことに
若い世代のデザイナーが共感してくれている事が
何より心強く、日本の将来が明るく感じました。


関連記事 点・線・面 有職故実ブログ


ご案内 AS2

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黒 BLACK

皆さんにとって黒のイメージはどのようなものでしょうか

勝負で言えば、負けは黒星
陰陽で言えば、陰は黒
喪服も黒色の服を着ます

逆に

経営で収益が支出を上回れば、黒字
車やクレジットカードで高級なイメージは黒
結婚式などの正装も黒色の服を着ます


黒は根源的な色であることから、多くのものに多用されます


黒は全ての光を吸収する色 全ての色の要素を内包している


正 負 陰 陽 希望 絶望 ネガ ポジ + - 


黒は私たちにとって常に身の回りにあります


今回のAS2では、この黒についても様々なものを
引き出せて行きたいと考えております。





今月最後の土曜日に開催致します。
是非、ご参加下さい。


AS2の詳細はこちらから









日向と日陰

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5月15日 今年も賀茂祭(葵祭)が開催されました。


私は、衣紋方(えもんかた)として葵祭に参加させて
頂きました。つまり行列に出られる方の装束の着付け役と
して裏方を担当させて頂きました。

先輩の装束司が高齢の為、若輩の私にその役目を引き継いで
下さいました。



このブログを投稿する事に、実は躊躇いがありました。


数有る京都の祭礼の中でも最古のもので、厳粛かつ優雅な
葵祭のバックヤードをお伝えする事は間違っていると思われる
方もおられるはずで、無意味な事かもしれません。

しかし、子供の時から見ていた葵祭を初めて裏方として携わり
舞台袖から見て、気付いたのは、あの荘厳なお祭を催行される
為に何れ程多くの方々の尽力が費やされているかという事です。
またその結晶が、日本各地、世界各国の人々の京都に対する
魅力に繋がっているのではないかと感じたからです。


この事を前置きとして、ここに記しておきます。




午前7時に京都御苑の紫宸殿に集合し、それぞれの配置に
着いて役割ごとに装束を着せていきます。



間違いが無いように装束が丁寧に纏められています。




人だけではなく、勅使を乗せる馬たちも綺麗な鞍飾り
を付けるため、大人しくその番を待ちます。











総勢約500名ほどの参列者の身支度を整える為に
数多くの専門の衣紋者、装束司、神具に携わる職人を始め
大垂髪(おすべらかし)など宮中結髪の専門家
化粧などを担当する美容関係の方
馬の準備をされる調教師の方々
保存会の方々、氏子の方々、護衛の為の皇宮警察官
神職の方々、宮内庁の方、京都御苑の職員、報道関係の方
と様々な人が集まり、10時の出発に向けて慌ただしく
各々の仕事に奔走していました。


その裏方の人数の多さは、行列に参列される方を凌ぐほどです。












陽が当たる場所があるということは同時に日陰も存在します。

賀茂祭などの神事に限った事ではなく、
どのような事でも同じなのですが、日陰の存在が
あるからこそ日向はより輝きを放つのだと思います。

京都の奥深さは、こうした日陰の存在が多くあり
その存在が連綿と絶える事なく今日まで続けていける
環境にあることが所以なのかもしれません。



今年の葵祭は、途中小雨の降る天候で観覧される方には
少し気の毒だったのかもしれません。

故事から紐解くと、このお祭りの起源は1400年程前の
京都では、この時期風水害が多発して飢饉に貧していました。
そこで賀茂祭を催行したところ、天気が好転し五穀豊になった
そうです。

賀茂祭に雨は付き物ということなのでしょうか。






実際、翌日は見事な五月晴れとなりました。













寄進 Contribution

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Cloud Founding クラウドファンディング

最近よく耳にする言葉です。

Cloud (群衆)と Founding (資金調達)を組み合わせた
造語で、インターネットを介して、不特定多数の方から
出資を募り、プロジェクトや事業、また様々な活動の
支援を行う仕組みの事を言います。

ソーシャルネットワークなどの普及に伴い、その仕組みは
世界中に広まりつつあり、個人の方でも小額の資金提供を
呼び掛け、プロジェクトを実行するケースも増えています。

新しいフリーソフトの開発、アーティストの活動支援、
発明品の開発、または映画製作など、クラウドファンディング
の仕組みを利用して、次々に実現に向かっています。

皆さんも、何か実現したい活動があれば、この仕組みを
使えば実現に近づくのです。

インターネット、ソーシャルメディアの普及の恩恵です。



と、横文字の新しい言葉を羅列して書きましたが
仕組み自体は、何も新しいものではありません。


「寄進」日本に昔からある言葉で同じ仕組みです。


寺社仏閣などで、何かを新調する際、金銭などを
その事業の為に寄付することを指します。


神社、また氏子中で改修の費用を負担するのには
限界があります。そこで広く様々な方に事業の説明
をして、お宮のある地域の活性化の一助となるように
寄付を募ります。


例えば、地元を離れ生活をしている方が、生まれ育った
地域にある神社の改修事業に寄進をしたり、還暦を迎えられた
方が、今まで健康に生活してこれた事に感謝の意を込めて
物品をお供えされることがあります。


普及するツールや、言葉を変えたことで注目されている
仕組みですが、古来から長く続けられている日本の風習です。



ある職人からのお声掛けにより、寄進という風習を改めて
認知してもらうため、クラウドファンディングの手法を用いて
大変意義ある事業のお手伝いをさせて頂く事になりました。


創刊109年を迎える、婦人画報が誌面とWEBマガジンで
危機に瀕している手仕事、工芸職人たちを今後も絶える
ことなく継承していけるようにと考えられた企画です。


つくろう!日本の手仕事の未来 婦人画報WEBサイトより


クラウドファンディングにより、集められた寄進をもとに
世界一の魔鏡を製作し、岩手県陸前高田で復興されるつつある
今泉天満宮に、その魔鏡を寄贈するという事業です。


製作をする職人は、以前このブログでもご紹介した
山本合金製作所の山本氏によるものです。







これは、弊社と魔鏡を作る山本氏との共同企画で
製作している「懐 ふところ」という小型の魔鏡を
内封したお守りです。


これをこの婦人画報の企画にご賛同頂き寄進をして頂いた方の
お返しの品として選んで頂きました。


装束店を営む私として、お宮の再建の一助になりえる
ことは大変光栄な事でありますし、この企画がネットを
通じて広く世界に発信される事により、手仕事の素晴らしさ
や力強さ、また逆に伝統工芸に従事する我々が直面している現実
をも広く認識して頂けることに大変感慨深いものを感じます。


個の力ではなし得ないことも、複数で共有することで
実現することを願います。



詳細は婦人画報のサイトよりご覧下さい。








制限 Limit

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10日程前、過去に教わった話が蘇ることがありました。


5年前に遡るのですが、舞台衣装を手掛けた時の話です。
能楽師、狂言師の方々と3年間舞台を通じてご一緒する
ことがあり、色々お話を聞かせて頂きました。


能、狂言では演者の所作や動きは極端に抑えられ
舞台も松の絵が描かれた3間 (5.4m) 四方の板間でのみ
行われる。敢えて制限を持たせている。


演者は動きに制限がある中で最大限に表現を試みるし
また、鑑賞する側も最大限に想像力を働かせてゆかないと
話の筋すら理解出来ない。
互いに想像力がなければ成り立たない。


ヨーロッパのオペラなどと対局にあり、全てにおいて
いい意味での縛りを活かし、研ぎ澄まされた美意識を
表現するのが日本の舞台と言われました。


もともと屋外で行われてきた事にも起因しているとは
思うのですが、簡素であるが故に成し得た美意識かも
しれません。






10日程前に、ある催しに協力させて頂きました。

「うつろひ草子」

夕暮れの陽の灯りから、闇夜に灯る和ろうそくの
灯りに移りゆく僅かなひと時を、文化や芸能に趣く
ことを体現して頂くという企画です。





私の手掛けた装束(狩衣)などを会場に設え、
笙の演奏を聴いて頂くという事を来場者の方々と
共有するものでした。


作り手側からすると、糸の色目や文様を吟味して
作り上げた装束なので、明るい場所で細部まで観て頂くのも
希望としてはありますが、装束の誕生は今から約1200年ほど
前です、勿論その頃に電気の照明器具などは存在もせず、
夜はろうそくや灯明の灯りのもとで装束は観られていたはずです。

寧ろ、ろうそくなどの灯りで観るほうが自然なのです。





この日は笙の演奏も和ろうそくの灯りのもとで
奏でて頂いたのですが、和ろうそくの仄かな明るさは
いい意味で視覚に縛りを設け、聴くことに集中すること
を可能にして普段とは違う感覚を感じて頂けたようです。


制限を設けることで、人はそれを補おうとあらゆる感覚を
駆使して、想像力を働かせることを身を持って経験出来ました。



最後に、ご参加頂いた皆様に改めて感謝を申し上げますと
共に、今後も日本の伝統美に触れて頂きたく存じます。

また、企画全てに携わられた Terminal81 宮下直樹氏、
笙の演奏を披露して頂いた井原季子氏
主催並びに素晴らしい場をご提供頂いた有斐斎 弘道館の皆々様、

皆様のご協力無くしては叶わなかった機会を頂けて感謝申し上げます。









掲載写真はすべて、Terminal 宮下直樹氏撮影によるものです。

うつろひ草子詳細

有斐斎 弘道館ホームページ

宮下直樹氏 terminal 81


ご案内 AS2

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今週末の11月2日(土)に、AS2 #16 Autumn が開催されます。


世界でも評価の高いインスタレーション作家の木村奈央さんを

お招きして、HubKyotoで展示致します。


当日は、そのインスタレーション作品からインスピレーションを

受けたライブパフォーマンスも行います。


平多好美さんは、木村さんの作品に感銘を受け、是非作品の

前でパフォーマンスをしたいとの事で、横浜から来て頂きます。



今回のサブタイトルでもある、浸潤するという言葉


思いや雰囲気などが広まる様という意味がるそうです。


AS2には、アート、人、食など様々な要素を用いて展開しております。

その全てのファクターが、来て頂いた皆様に浸潤するように努めて

参りたいと、只今準備に勤しんでいます。



有職故実   YUSOKU KOJITSU



また、皆さまのお顔を拝見出来れば幸いです。

ご都合宜しければ、是非お越し下さい。





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#16 AS2 Autumn Nao Kimura Exhibition
木村奈央展 -Innocence-

日時:2013年11月2日(土)14:00~20:0
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・15:00~、18:00~、20:00に平多好美パ
フォーマンス
・17:00~トークショー

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タイムテーブル:

・14:00~乾杯
・15:00~平多好美 パフォーマンス(約10分)
・17:00~トークショー(インタビュー原麻由美)
・18:00~平多好美 パフォーマンス(約10分)
・20:00 平多好美 パフォーマンス(約10分)エンディング

※採れたて作物を用いた手作りのパーティフードとドリン
クをご用意致しております

アーティスト:木村奈央 氏

パフォーマンス:平多好美 氏

場所:Hub Kyoto
(京都市営地下鉄烏丸線鞍馬口駅1番出口より徒歩すぐ)

入場:無料

ただし、お勧めの一品をお持ち寄り頂くか、
アーティストポストカードセット(¥500)を販売致し
ております。
その売り上げはAS2のアーティスト支援活動基金として
活用致します。また東日本大震災の義援金として塩釜青年
会議所へ寄付させて頂きます。

なお、お子様連れも大歓迎ですので、
どうぞお気兼ねなくお越し下さい。
お会いできるのを楽しみにしております。

(公式ブログでの告知文はこちらからご確認頂けます。)
http://ameblo.jp/as2blg/
entry-11638041932.html

装束再考察 Vol.3

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皆さんのお着物の中に、家紋の入ったものがお有りだと
思いますが、それぞれにその家の紋(マーク)あり、それを衣服に
充てがう文化があるのは、日本らしい風習だと思います。


その紋のデザインは丸の形をしているもが多いと思います。


装束で狩衣などに使用する文様にも丸の紋を多く使います。


有職装束に使う丸紋も多種多様にあるのですが、代表的で
比較的多く使用される丸紋を幾つか下に挙げます。



有職故実   YUSOKU KOJITSU

  臥蝶の丸 じんちょうのまる


有職故実   YUSOKU KOJITSU

  雲鶴の丸 うんかくのまる


有職故実   YUSOKU KOJITSU

  花鳥の丸 かちょうのまる




植物や動物など自然界のものを丸の中に描く意匠が特徴です。
丸紋以外にも、形としては色々とあるのですが、丸を基本形として
のデザインが多く取り入れられています。


ではなぜ、丸紋が多いのか?という疑問が湧いてきます。


有職故実   YUSOKU KOJITSU

連珠円紋(れんじゅえんもん)と呼ばれる意匠の写真です。


6世紀ごろに生み出された柄だと云われています。
発祥地はソグド、今のウズベキスタンの辺りという事です。


ウズベキスタンやタジキスタンなどの所謂中央アジア圏は
古来から西と東を結ぶ、重要な貿易の要の都市として発展して
きた場所だそうです。

丸の中に、鳥獣、狩猟、樹下動物、花紋を入れ込み形成された
一連のデザインは、装束で扱う有職文様に起因している
ように思います。


また、丸の中にいる動物などは、番(つがい)で左右対称のものが
多く、上で挙げた雲鶴紋などと作りが似ています。


ある意味、敢えて丸の中だけで表現するという制限を持たせて
いるかのようで、非常にコンパクトに模様を表現するように出来て
いるように思えます。


また、鶴と雲や、鳥と花など何かと組み合わせるパターンも
多く見受けられます。その組み合わせで1つの情景を思い浮かばせます。


有職故実   YUSOKU KOJITSU

四騎獅子狩紋錦 (しきししかりもんきん)

思わず舌を噛みそうな名前ですが、これは日本最古の木造建築
として知られる法隆寺に残されている国宝の錦の生地の写真です。



樹下動物 樹木を中心として、馬に跨った貴人が獅子狩りをしている
風景が連珠円紋の中に描かれています。

中央に配した樹木がその背景を表現するのに効果的に使われて
います。こうした図案は、樹下動物と言われ、有職文様でも
見受けられます。



$有職故実   YUSOKU KOJITSU









有職故実   YUSOKU KOJITSU


これは、正倉院に保管されている屏風の1つで
鹿草木來纈屏風(しかくさききょうけちのびょうぶ)と読みます。
もう完全に舌は噛んでしまいます。


古代ペルシャでは、天空には恵みの雨を降らせる深海があり
その海中には、ハマオという聖樹があり、不死の霊薬が作られる
という伝承があるとされ、その木の下は聖地や楽園を意味し、
その場所にいる動物たちは清められ祝福されることを表している
と記されています。


水場があり樹木が生い茂る所には動物たちも集うという
理想郷を描いています。

中央アジア圏は砂漠地帯ですので、長い交易の旅路は困難を
極めたのではないでしょうか、その途中にあるオアシスが
商人たちにとって理想郷であったのかもしれません。



最後に、日本に今もある樹下動物の文様を紹介します。


$有職故実   YUSOKU KOJITSU

桐竹鳳凰麒麟 きりたけほうおうきりん

装束の文様として使用されるのは天皇のみとされています。

平穏な時代を治めた君主を褒めるために、天上より舞い降りる
鳳凰は桐の木に巣くい、60年に1度実る竹の実を食べ、現世に
巣くうとされる。しかし国が荒れると、たちまち天上に飛び去って
しまう。

このような平穏の状態を表す柄としての意味合いから
天皇の装束のみに用いるようにと定めてあります。



このように1つの意匠から読み取れる意味合いは実に興味深く
人種や国を問わず、美しいものが集う世界は平穏だということ
を説いているように感じますし、
人間の理想郷に対する飽くなき追求も感じ取れます。


毎度ながらの長文のお付き合い、有難うございます。











点・線・面

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私たちが毎日のように手にする織物や生地は、例えて言えば面。
その一枚の面を色々繋ぎ合わせて1着の衣類にします。

その面である織物は、経糸と緯糸の交差で構成されています。
つまり1本の線。何千本、何万本の線の交差で1つの面を作り出しています。

1本の線である糸は、1匹の蚕が生み出す繊維。
遡っていくと1匹の蚕に辿り着きます。言い換えれば点です。

点から点を1本の線として結び、その線を幾重にも交差をすることで
様々な面を生み出していきます。



人の出会いも同じようなもので、ある1つの出会いから始まり
様々な人の出会いを介して、ある局面を迎えるように思えます。



今、あるプロジェクトが進行中です。

今年の夏、ある方を介してお会いした方々と、今までにない
装束で使用する有職文様を生み出そうというプロジェクトです。

東京デザインプレックス研究所の沼田努さんと、
そこでデザインの勉強をしながら、様々な企業の
企画のデザインなどを手掛ける、villageというユニットの
芦田さん、田中さん、高山さん、熊川さんの4人。

$有職故実   YUSOKU KOJITSU

20歳中盤から30歳前半の若い4人からなるチームと
アドバイザーとして、沼田努さんにも参加してもらい
進めているプロジェクトです。


4人の方々は、今まで有職文様についての基礎知識はなく
神官装束がどのような物かも知らない人たちでした。


プロジェクト当初、彼らには、実際に装束を見てもらったり、
有職紋様の基礎的な知識を把握してもらいました。
先月には京都に来てもらって、実際に織物が
作られる工房なども見学してもらいました。


勿論、それだけで有識装束の全てが解釈出来るとは私も思って
はいません。


ですが、実はその部分がこの企画の大事な部分でもあります。


有識文様は、このブログでも書いたように長い時間をかけて
熟成された文様の蓄積が今も受け継がれています。

今では、歴史ある伝統を受け継いだ文様も、生み出された時代には
非常に前衛的なものであったかも知れませんし、最初は受け入れ
にくい柄であったかも知れません。


私は平成、または次の時代に繋がる文様を考えるうえで、
全く違う分野で活躍されている方の考えが反映される事で、
ある種の化学反応のような結果を生み出すのではないかと
考えています。


点と点が繋がり、線と線が交差を繰り返し、今までに見た
ことないような、新しい面が生み出される事を期待して


$有職故実   YUSOKU KOJITSU



彼らと共に、文様のブラッシュアップを進めて参ります。

皆さんもこのプロジェクトに期待して頂き、見守って頂ければ
幸いに思います。


最後に、この素晴らしい出会いを叶えて頂いた
山本ミッシェールさんにお礼申し上げます。




















Genetalk #003 告知

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以前から親交のある、GENETO建築設計事務所でトークイベント

のご依頼を賜りました。


彼らとは、業種の垣根を越えて、共同で様々な企画を進めてきました。


神官装束、神殿調度品を扱う装束司と、建築設計士

日々している仕事は違いますが、


『場』をつくる事に関しては、共通しているとも言えます。



装束や、調度品を用いて、厳かな雰囲気を作り出す。


建物を建てる事により、その地域の街並みを作り出す。


自分の専門知識などを活かして、『場』を提供する。




この場を辞書で引くと、人が集まる所と訳されています。

彼らと一緒に、場を設えることで、垣根の超えた交流の場所を

生み出すことが出来ると考えます。




本来、装束店が神社のことなどを皆さまにお話しするのは

大変僭越であり、出過ぎた事だとは重々理解をしております。



私は宗教家でもありませんし、神職の身でもありません。

あくまでも、神道の分野の方々の下支えを生業としてきた

なかで、学んできたこと、経験したことをお話し出来れば

との思いです。



以前にもこのブログで書いたのですが、長い間培ってきた

文化や風習が、間違った解釈で伝わる事に憂いでいます。


神道は日本独自のものですし、日本人が伝えていかないと

なくなってしまいます。



そんな思いに、GENETOは応えてくれました。



1月24日の金曜日、夜7時から始めます。

ご興味頂ける方は、是非お越し頂ければ幸いに存じます。




詳細は、こちら から。







お誂え

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誂える あつらえる

お誂えをされた経験は皆さんありますか?

現代風に言うと、オーダーメイドです。

スーツを誂えた経験はある方もおられると思いますが、
足袋を誂えされた方は少ないかもしれません。

京都は茶道、華道のお家元も多く、また能、狂言、歌舞伎役者
花街の舞妓さんなど和装をお召しになるプロの方々が
多くおられます。

和装の足下は足袋が必須です。毎日足袋を履かれる方にとって
足袋は自分に合った物が必要になります。

そこで、所謂プロの和装の方は自分の足の寸法を採寸して足袋を
誂えるのです。

ですが、そんなプロの和装の方でさえ最近では誂える方が希有と
なっているのが現状で、それに比例し足袋を縫製する職人も非常
に貴重な存在となっています。

数十年前には、京都はもちろん、東京にも数多くの誂え専門の
足袋屋さんがありました。

今では、足をミリ単位まで採寸して、お誂えの足袋を縫製する
職人は日本で、いや世界で1人となってしまいました。




呉服屋さんやデパートで販売されている足袋は既製品です。
つまりそのお店の型をもとに作られた規格品です。

足の形は幅広、甲高など千差万別、自分と同じ足の形の人は
ほとんどいません。どこかが余ってシワが出たり、窮屈な部分
が出て足が痛くなったりするのは当然と言えば当然です。

また既製品は、生地を効率良く使用する事が優先されますので、
足の大きさに対して、生地を極力少なく仕立ててありしっかり
足を包むことが出来ません。

足の袋と書いて足袋と読むのに、しっかり包み込むことが
出来なければ本末転倒です。




また、足袋にも正しい履き方があります。
縫い目に合わせた足の入れ方があるそうで
この履き方で足袋に足を入れるとコハゼ(留金具)も簡単
に止められ、足も痛くなりにくいとのこと。


着物の着付け方は習っても、足袋の履き方までは教わった
経験がなく、私も目から鱗が落ちました。




この職人のもとには、日本中または世界中からの注文の依頼
が多く寄せられ、今から頼んでも出来上がるのは半年後だそう
です。それもそのはずです、この方以外にお願いする所もなく
この方1人で総ての行程を熟していかれるのですから。
半年でも早い方かもしれません。


本当に良いものは手間暇がかかるのです。


私が個人的に気に入っているのは、履き心地、見栄え
は当たり前なのですが、コハゼ(留金具)に名前を
刻印して頂けることです。

お誂えの印。 粋というものです。


ご興味おありでしたら、弊社までご一報下さい。
この職人のもとへお連れ致します。












One hundred

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100年先のことを考えたりされますでしょうか。

今が2014年ですから2114年です。

私は今年で41歳なので、100年後は141歳となります。
生きていれば、テレビに出れるくらいのご長寿です。

いや、普段の不摂生を顧みると恐らく無理です。
いやまた、再生医療などが進歩して、今より若々しく
過ごしているかも。。。。


と、想像するとキリがありません。



昔の人も100年先、何百年先の未来を想像していた
と思いますし、何かを生み出そうとした時には
未来に向けて受け継がれていくように思いを込めたと
思います。


100年先の未来に標準を定め
4人の若きデザイナーと私とで
新たな文様を生み出そうというプロジェクトが
進行中です。


東京デザインプレックス研究所の協力のもと
Villegeというデザインユニットの4人のチームに
有職文様のデザインを依頼をして、私が培った経験を基に
実際に装束の文様として理に適っているかを精査する
という作業を繰り返してきました。





文様のデザインを考えるにあたり
最初に行ったのは柄のモチーフの選別とコンセプトです。

有職文様は自然界に存在するものを使う大前提があり
過去の文様は植物、動物、また雲や波などの自然現象などを
巧みに用いて作り出されています。

つまり周りにある身近な動植物を用いたり
四季を通じて変わる自然など、目に見える
ものを柄に落とし込んでいる訳です。



今回、この平成の時代に文様を考える上で
文明の進んだこの時代だからこそ見る事が出来る
ようになった自然界の物に着眼しています。


例えば、肉眼では観察することが出来なかった
物が顕微鏡という文明の力で拡大して見れるように
なった細微なもの。

決して素潜りでは辿り着けなかった深海の世界

空を飛べるようになり、地上からでは見れなかった世界

流通の発達で、日本では自生していなかった植物が身近
になり愛でることができるようになった花



これまでに彼らが私に提案してくれた文様は40種類を
超えています。その1つ1つを精査してようやく3種類に
絞り込みました。





100年後、恐らく私も彼らも生きてはいないでしょう。
でも、その100年後の為に真剣に取組んでいます。

今までに作られた文様も何年もの時間を掛け
伝統文様としての今があります。


目先の評価を求めるのではなく、次の世代に評価される
ことを想像し文様(デザイン)を考え抜くことに
若い世代のデザイナーが共感してくれている事が
何より心強く、日本の将来が明るく感じました。


関連記事 点・線・面 有職故実ブログ


ご案内 AS2

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黒 BLACK

皆さんにとって黒のイメージはどのようなものでしょうか

勝負で言えば、負けは黒星
陰陽で言えば、陰は黒
喪服も黒色の服を着ます

逆に

経営で収益が支出を上回れば、黒字
車やクレジットカードで高級なイメージは黒
結婚式などの正装も黒色の服を着ます


黒は根源的な色であることから、多くのものに多用されます


黒は全ての光を吸収する色 全ての色の要素を内包している


正 負 陰 陽 希望 絶望 ネガ ポジ + - 


黒は私たちにとって常に身の回りにあります


今回のAS2では、この黒についても様々なものを
引き出せて行きたいと考えております。





今月最後の土曜日に開催致します。
是非、ご参加下さい。


AS2の詳細はこちらから









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