南蛮渡来の絵で蛮絵(ばんえ)
鳥獣や草花のモチーフを丸く円紋風にまとめた意匠です。
もともとは、公家の護衛を努めた近衛兵の装束に用いられた意匠で
麻素材の装束に木版で摺り染めを施していました。
ちなみに上の蛮絵の意匠のモチーフは『熊』です。
足元の鋭い爪を見ると、なるほどと思いますが、胴体や顔は熊とは程遠い
感じがしますが、熊なのです。
では、次の蛮絵のモチーフになった動物は何だと思いますか?
答えは、獅子 つまり『ライオン』です。
鬣(たてがみ)もなければ、足の形状もいい加減にデフォルメされて
いますが、これもれっきとしたライオンです。
この蛮絵、諸説諸々で正確なところは定かではありませんが、
平安時代初期から伝わっているそうです。
このような鳥獣を円形にする意匠のルーツは、ササン朝ペルシャ(西暦200年頃)
の壁画や硬貨、装飾品に大変良く似たものがあり、恐らく西方の蛮国から伝わった
模様ということで、蛮絵と呼ぶようになったという説が有力です。
長い時間を掛け、国から国へ、人から人への気の遠くなる程の伝言ゲームを
世界レベルで行っているわけですから、最初と最後ではかなりのギャップを
生むのかもしれません。 無理もないです。写真などないのです、絵で描いて
あとは口伝えでいくしかありません。言語も違うのに。。。
伝える人の絵の力量も影響します。
どこかでズレてしまったモチーフでいうと、ペルシャ絨毯にもよく似た
事象が見受けられます。
ペルシャ絨毯のトライバルギャッペ(遊牧民の絨毯)というカテゴリー
に入る物で、『ライオンラグ』というものがあります。
主にイラン地方の遊牧民が織った絨毯です。
もはや、独自の世界観すら感じるデザイン。
これを見てライオンと言う人は、ほとんどいないと思います。
でも彼らにしてみれば、ライオンなのです。
アフリカの人にしてみれば、『お前達、ライオン見たことあんのかっ!』という
言うでしょう。 でも無理もないです。実際のライオンは恐らく見たこともなく
織り上げたのですから。。。
間違いだらけなのに、その土地に根付いて、その土地の伝統として受け継がれて
いく。情報がどこでも手に入る現代では決して起こりうる事はないと思います。
ある意味で貴重だなぁと思い、私も数年前にライオンラグを購入しました。
このような事にインスパイアされ、このほど弊社でも狩衣(かりぎぬ)の装束用
に織物を考案させて頂きました。
モチーフは鸚鵡(オウム)です。オウムはもともとパプアニューギニア原産の
鳥ですが、言葉を喋る霊鳥として、古来から輸入されていたとも言われています。
輸入されていたお陰もあってか、まだオウムらしいでしょうか。
でも、スズメのほうが近いようにも見えます。
神官装束の狩衣では、この蛮絵を意匠に取り入れるのは
恐らく初めての試みだと思います。
窠霰地紋に向蛮絵鸚鵡(かにあられじもんにむかいばんえのおうむ)
白地に薄縹色(うすはなだいろ)紋
蘇芳色(すほういろ)地に白紋
いつもの事ですが。。。 長いブログになってしまいました。
お付き合い有難うございます。
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蛮絵
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