有職文様 (ゆうそくもんよう)
平安時代にかけて、構築された模様で、主に神官装束、平安公家装束に
用いられる文様です。
私たち装束司は、狩衣装束の織物にこの文様を用いています。
雲立枠 (くもたてわく)
亀甲 (きっこう)
小葵 (こあおい)
有職文様は他にも数えきれない程あります、ここでは代表的な柄を4つ挙げます。
この柄などは、私たちは主に織物の地模様 (背景になる柄) として利用します。
さらに、この上に丸紋を配して、織物は完成します。
共通して言えることは、幾何学模様であることと、デザインのモチーフにするものは
自然界にあるものを使うところでしょうか。
連続して続くパターンが美しいです。
世界に目を向けると、様々な文様があります。
上の柄は、一般的にアラベスク文様と呼ばれ、イスラム圏で生まれた
模様です。
生み出された時代も国も文化、思想も違うのですが、見比べてみると
その類似性は非常に興味が湧いてきます。
このアラベスク文様も、幾何学模様で植物の蔓(つる)など自然界のもの
をモチーフにするのが決まりだそうです。
有職文様は日本人が生み出した、日本独自の柄ですが、
やはり、シルクロードの影響が、色濃く反映していることがわかります。
気の遠くなるほどの時間を掛け、大陸を跨ぎ、人から人へ
伝えられた絵画、織物、陶器など装飾品にインスパイアされた柄が
日本人の感性に溶け合い、有職文様は生まれていったのかもしれません。
また、この類似性は、何も昔の柄だけに留まりません。
上の2つの柄は、フィンランドのMarimekko社のパターンです。
完全な幾何学模様とは言えませんが、同じ柄が連続しているところと
やはり、モチーフが自然界のものが使われています。
この2つのパターンは、ミッドセンチュリーパターンと言われ、1960年代に勃興した
柄です。 当時 『レトロヒューチャー』 と表現され、壁紙やカーテン、ソファーカバーなど
に多く取り入れられ、現在でも人気の柄です。
同じ柄の連続性から醸し出される雰囲気は、有職文様に通じるところが見受けられます。
この2つは、皆さんよくご存じですよね。 持っている方も多いかも。
モノグラムと花柄を使い、配置方法としては先のものと同じです。
この柄は、19世紀に創業家の2代目、ジョルジュ・ヴィトンが考案したそうで、
その当時のパリでは、ジャパニズムという風潮が流行していて、日本の家紋をモデルに
考え出されたとの記述があります。
また、長々と綴ってしまいました。
改めて思う事は、文化や美意識は、時代を飛び越え、流転し続けているんだなぁ
ということです。
今回もお付き合い有難うございました。
次回は、装束に使う丸紋についてお話したいと思います。