もう2月も半ばになっていますね。
ブログをおざなりにしていた訳ではないのですが、
今年初めての更新となります。
今年も何卒宜しくお付き合い頂ければ幸いです。
去年は、日本文化についての話題が多かったので
今年は、本業の装束についてのお話をしていきたいと考えています。
狩衣 (かりぎぬ)
私たち、装束店が年間最も多く縫製する装束です。
狩りの衣と記すだけあって、平安時代に公家が鷹狩などをする際に着用された
言わばスポーツウェアとしての役割を担ってきました。
時代を経て、今では日本全国の神職が、常用着として着用するに至ります。
皆さんが、何かの祈祷に出向かれてお祓いを受ける際には、必ず神職は
この狩衣を着装しています。
勿論、狩衣以外にも沢山の装束はあるのですが、ほとんどの一般神事は
この狩衣で行われます。
形は、単純な物で、アルファベットの 『T』 の字の形をしています。
身頃と両袖の部分との3ピースで仕立てられています。
これを羽織り、同生地の帯を腰で結わうだけの非常に簡素化された
造りとなっています。
寸法も全て画一化されていて、着る方に合わせて寸法を合わせる事は
基本的にはないのです。
着装するとこのような姿になります。
これは私の推測でしかないのですが、大振りの袖や後ろ姿をみると、
鳥をイメージした形に思えます。
大空を舞う鳥などに、憧れや畏敬の念を強く抱いていたのかは定かでは
ありませんが、頭の被り物も、烏帽子というほどですから、何かしらの
意識はあったのではないかと思います。
これを着て鷹狩をしていた公家には、鳥に対するオマージュが込められて
いたのかもしれません。
狩衣の説明をすると、色柄は階級によって変わるのですかと
質問される事が多いです。
装束に種類によっては、厳格に定められた物もありますが
狩衣においては、基本的には自由とされています。
調整する装束店が考案したり、神職の好みなども反映されます。
ただ形が定まっているので、紋柄の配置は自ずと同じになります。
紋柄のモチーフも自然界にあるものを具象化していくのが、基本的な
決まり事として守られています。
作り手にある種の自由が認められているので、装束司にとっては
手腕を振るうところでもありますし、店としてのオリジナリティが出せる
貴重な装束とも言えます。
季節によって色目を変えたり、神職の威厳を表現したり
地域性やその土地の云われや伝統を表したりと、様々な要素から
狩衣の図案構成のコンセプトを決めていきます。
次回は、柄についての説明をしたいと思います。 (続)
狩衣のその他の画像は、弊社ホームページ でご覧ください。